# ファームウェアを書きこむ カスタムファームウェアは出来たので、キーボードに書き込みたくなるでしょう/フラッシュしたくなるでしょう。 ## QMK Toolbox を使ってキーボードに書き込む キーボードに書き込む最も簡単な方法は [QMK Toolbox](https://github.com/qmk/qmk_toolbox/releases) を使うことです。 ただし、QMK Toolbox は、現在は Windows と macOS でしか使えません。 Linuxを使用している場合(および、コマンドラインでファームウェアを書き込みたい場合)は、下の方で概説する[方法](newbs_flashing.md#コマンドラインでファームウェアを書き込む)で行なう必要があります。 ### QMK Toolbox にファイルをロードする まず QMK Toolbox アプリケーションを起動します。 Finder またはエクスプローラーでファームウェアのファイルを探します。 ファイル名は `.hex` または `.bin` のどちらかの形式です。 ビルド時に QMK は、キーボードに適した形式のものを `qmk_firmware` のトップフォルダにコピーしているはずです。 Windows か macOS を使用しているときは現在のファームウェアフォルダをエクスプローラーか Finder で簡単に開くためのコマンドがあります。 #### Windows ``` start . ``` #### macOS ``` open . ``` ファームウェアファイルは常に以下の命名形式に従っています。 ``` _.{bin,hex} ``` 例えば、`plank/rev5` の `default` キーマップのファイル名は以下のようになります。 ``` planck_rev5_default.hex ``` ファームウェアファイルを見つけたら、QMK Toolbox の "Local file" ボックスにドラッグするか、"Open" をクリックしてファームウェアファイルを指定します。 ### キーボードを DFU (Bootloader) モードにする ファームウェアを書き込むには、キーボードを普段とは違う特別な状態、フラッシュモードにする必要があります。 このモードでは、キーボードはキーボードとしての機能をはたしません。 ファームウェアの書き込み中にキーボードのケーブルを抜いたり、書き込みプロセスを中断したりしないことが非常に重要です。 キーボードによって、この特別なモードに入る方法は異なります。 キーボードが現在 QMK または TMK を実行しており、キーボードメーカーから具体的な指示が与えられていない場合は、次を順番に試してください。 * 両方のシフトキーを押しながら、`Pause` キーを押す * 両方のシフトキーを押しながら、`B` キーを押す * キーボードのケーブルを抜いて、スペースバーとBを同時に押しながら、キーボードを再び接続し、1秒待ってからキーを放す * 基板(PCB)に付けられている物理的な `RESET` ボタンを押す * PCB 上の `BOOT0` か `RESET` のラベルの付いたヘッダピンを探し、PCB 接続中にそれらを互いにショートする うまくいけば、QMK Toolboxに次のようなメッセージが表示されます。 ``` *** Clueboard - Clueboard 66% HotSwap disconnected -- 0xC1ED:0x2390 *** DFU device connected ``` ### キーボードへの書き込み QMK Toolbox の `Flash` ボタンをクリックします。 次のような出力が表示されます。 ``` *** Clueboard - Clueboard 66% HotSwap disconnected -- 0xC1ED:0x2390 *** DFU device connected *** Attempting to flash, please don't remove device >>> dfu-programmer atmega32u4 erase --force Erasing flash... Success Checking memory from 0x0 to 0x6FFF... Empty. >>> dfu-programmer atmega32u4 flash /Users/skully/qmk_firmware/clueboard_66_hotswap_gen1_skully.hex Checking memory from 0x0 to 0x55FF... Empty. 0% 100% Programming 0x5600 bytes... [>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>] Success 0% 100% Reading 0x7000 bytes... [>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>] Success Validating... Success 0x5600 bytes written into 0x7000 bytes memory (76.79%). >>> dfu-programmer atmega32u4 reset *** DFU device disconnected *** Clueboard - Clueboard 66% HotSwap connected -- 0xC1ED:0x2390 ``` ## コマンドラインでファームウェアを書き込む これは、以前のものと比較して非常に単純になりました。 ファームウェアをコンパイルして書き込む準備ができたら、ターミナルウィンドウを開いてビルドコマンドを実行します。 make ::flash たとえば、キーマップの名前が xyverz で、rev5 planck のキーマップを作成している場合、次のコマンドを使用します。 make planck/rev5:xyverz:flash これにより、キーボードの構成が確認され、指定されたブートローダに基づいてキーボードへの書き込みが試行されます。 これはあなたがキーボードが使用するブートローダを知る必要がないことを意味します。 コマンドをただ実行して、コマンド自身に難しい処理を任せます。 ただし、これはキーボードごとに設定されているブートローダに依存します。 もしこの情報が設定されていない場合、または使用しているキーボードのファームウェアの書き込みにサポートしていないターゲットが設定されている場合、次のエラーが表示されます。 WARNING: This board's bootloader is not specified or is not supported by the ":flash" target at this time. この場合、あなたは明示的にブートローダを指定する方法を使わなければなりません。 ブートローダは主に 5 種類のものが使われています。 Pro Micro とそのクローンは Caterina を、Teensy は HalfKay を、OLKBの AVR ボードは QMK-DFU を、その他の ATmega32U4 ボードは DFU を、そして多くの ARM ボードは ARM DFU を使います。 より詳しいブートローダの情報は、[Flashing Instructions and Bootloader Information](flashing.md) にあります。 使用しているブートローダがわかっているならば、ファームウェアをコンパイルするときに、実は `make` コマンドにブートローダを指定するテキストを追加して、書き込みプロセスを自動化できます。 ### DFU DFU ブートローダの場合、ファームウェアをコンパイルして書き込む準備ができたら、ターミナルウィンドウを開いてビルドコマンドを実行します。 make ::dfu たとえば、キーマップの名前が xyverz で、rev5 planck のキーマップを作成している場合、次のコマンドを使用します。 make planck/rev5:xyverz:dfu コンパイルが終了すると、以下の出力になるはずです。 ``` Linking: .build/planck_rev5_xyverz.elf [OK] Creating load file for flashing: .build/planck_rev5_xyverz.hex [OK] Copying planck_rev5_xyverz.hex to qmk_firmware folder [OK] Checking file size of planck_rev5_xyverz.hex * File size is fine - 18574/28672 ``` ここまでくると、ビルドスクリプトは5秒ごとに DFU ブートローダを探します。 デバイスが見つかるか、あなたがキャンセルするまで、以下を繰り返します。 dfu-programmer: no device present. Error: Bootloader not found. Trying again in 5s. これを実行したら、コントローラーをリセットする必要があります。 そして下のような出力が表示されます。 ``` *** Attempting to flash, please don't remove device >>> dfu-programmer atmega32u4 erase --force Erasing flash... Success Checking memory from 0x0 to 0x6FFF... Empty. >>> dfu-programmer atmega32u4 flash /Users/skully/qmk_firmware/clueboard_66_hotswap_gen1_skully.hex Checking memory from 0x0 to 0x55FF... Empty. 0% 100% Programming 0x5600 bytes... [>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>] Success 0% 100% Reading 0x7000 bytes... [>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>] Success Validating... Success 0x5600 bytes written into 0x7000 bytes memory (76.79%). >>> dfu-programmer atmega32u4 reset ``` ?> `dfu-programmer:no device present` など、これに関する問題がある場合は、[よくある質問](faq_build.md) を参照してください。 #### DFU コマンド ファームウェアを DFU デバイスに書き込むために使用できる DFU コマンドがいくつかあります。 * `:dfu` - これが通常のオプションで、DFUデバイスが使用可能になるまで待機したのちファームウェアを書き込みます。5秒ごとに、DFUデバイスが存在するかチェックしています。 * `:dfu-ee` - 通常の hex ファイルの代わりに `eep` ファイルを書き込みます。これを使用するのはまれです。 * `:dfu-split-left` - デフォルトオプション (`:dfu`) と同様に、通常のファームウェアが書き込まれます。ただし、分割キーボードの「左側の」 EEPROMファイルも書き込まれます。_これは、Elite C ベースの分割キーボードに最適です。_ * `:dfu-split-right` - デフォルトオプション (`:dfu`) と同様に、通常のファームウェアが書き込まれます。ただし、分割キーボードの「右側の」EEPROMファイルも書き込まれます。_これは、Elite C ベースの分割キーボードに最適です。_ ### Caterina Arduino ボードとそれらのクローンの場合(たとえば SparkFun ProMicro)、ファームウェアをコンパイルして書き込む準備ができたら、ターミナルウィンドウを開いてビルドコマンドを実行します。 make ::avrdude たとえば、キーマップの名前が xyverz で、rev2 Lets Split のキーマップを作成している場合、次のコマンドを使用します。 make lets_split/rev2:xyverz:avrdude ファームウェアのコンパイルが完了すると、以下のように出力されます。 ``` Linking: .build/lets_split_rev2_xyverz.elf [OK] Creating load file for flashing: .build/lets_split_rev2_xyverz.hex [OK] Checking file size of lets_split_rev2_xyverz.hex [OK] * File size is fine - 27938/28672 Detecting USB port, reset your controller now.............. ``` この時点で、キーボードをリセットすると、スクリプトがブートローダを検出し、キーボードに書き込みます。出力は次のようになります。 ``` Detected controller on USB port at /dev/ttyS15 Connecting to programmer: . Found programmer: Id = "CATERIN"; type = S Software Version = 1.0; No Hardware Version given. Programmer supports auto addr increment. Programmer supports buffered memory access with buffersize=128 bytes. Programmer supports the following devices: Device code: 0x44 avrdude.exe: AVR device initialized and ready to accept instructions Reading | ################################################## | 100% 0.00s avrdude.exe: Device signature = 0x1e9587 (probably m32u4) avrdude.exe: NOTE: "flash" memory has been specified, an erase cycle will be performed To disable this feature, specify the -D option. avrdude.exe: erasing chip avrdude.exe: reading input file "./.build/lets_split_rev2_xyverz.hex" avrdude.exe: input file ./.build/lets_split_rev2_xyverz.hex auto detected as Intel Hex avrdude.exe: writing flash (27938 bytes): Writing | ################################################## | 100% 2.40s avrdude.exe: 27938 bytes of flash written avrdude.exe: verifying flash memory against ./.build/lets_split_rev2_xyverz.hex: avrdude.exe: load data flash data from input file ./.build/lets_split_rev2_xyverz.hex: avrdude.exe: input file ./.build/lets_split_rev2_xyverz.hex auto detected as Intel Hex avrdude.exe: input file ./.build/lets_split_rev2_xyverz.hex contains 27938 bytes avrdude.exe: reading on-chip flash data: Reading | ################################################## | 100% 0.43s avrdude.exe: verifying ... avrdude.exe: 27938 bytes of flash verified avrdude.exe: safemode: Fuses OK (E:CB, H:D8, L:FF) avrdude.exe done. Thank you. ``` うまくいかない時は、以下のようにする必要があるかもしれません。 sudo make ::avrdude #### Caterina コマンド ファームウェアを DFU デバイスに書き込むために使用できる DFU コマンドがいくつかあります。 * `:avrdude` - これが通常のオプションで、Caterina デバイスが(新しい COM ポートを検出して)使用可能になるまで待機し、ファームウェアを書き込みます。 * `:avrdude-loop` - これは `:avrdude` と同じです。ただし書き込みが終了すると再び Caterina デバイスの書き込み待ちに戻ります。これは何台ものデバイスへの書き込みに便利です。_Control+C を押して、手動でこの繰り返しを終了させる必要があります。_ * `:avrdude-split-left` - デフォルトオプション(`:avrdude`)と同様に通常のファームウェアが書き込まれます。ただし、分割キーボードの「左側の」EEPROMファイルもフラッシュされます。 _これは、Pro Micro ベースの分割キーボードに最適です。_ * `:avrdude-split-right` - デフォルトオプション(`:avrdude`)と同様に通常のファームウェアが書き込まれます。ただし、分割キーボードの「右側の」EEPROMファイルもフラッシュされます。 _これは、Pro Micro ベースの分割キーボードに最適です。_ ### HalfKay PJRC デバイス(Teensy シリーズ)の場合、ファームウェアをコンパイルして書き込む準備ができたら、ターミナルウィンドウを開いてビルドコマンドを実行します。 make ::teensy たとえば、キーマップの名前が xyverz で、Ergodox または Ergodox EZ のキーマップを作成している場合、次のコマンドを使用します。 make ergodox_ez:xyverz:teensy ファームウェアのコンパイルが完了すると、以下のように出力されます。 ``` Linking: .build/ergodox_ez_xyverz.elf [OK] Creating load file for flashing: .build/ergodox_ez_xyverz.hex [OK] Checking file size of ergodox_ez_xyverz.hex [OK] * File size is fine - 25584/32256 Teensy Loader, Command Line, Version 2.1 Read "./.build/ergodox_ez_xyverz.hex": 25584 bytes, 79.3% usage Waiting for Teensy device... (hint: press the reset button) ``` この時点で、キーボードをリセットします。すると、次のような出力が表示されます。 ``` Found HalfKay Bootloader Read "./.build/ergodox_ez_xyverz.hex": 28532 bytes, 88.5% usage Programming............................................................................................................................................................................ ................................................... Booting ``` ### STM32 (ARM) 主な ARM ボード (Proton C, Planck Rev 6, Preonic Rev 3 を含む)の場合、ファームウェアをコンパイルして書き込む準備ができたら、ターミナルウィンドウを開いてビルドコマンドを実行します。 make ::dfu-util たとえば、キーマップの名前が xyverz で、Planck Revision 6 のキーマップを作成している場合、次のコマンドを使用し、(コンパイルが終わる前に)キーボードを再起動してブートローダを起動します: make planck/rev6:xyverz:dfu-util ファームウェアのコンパイルが完了すると、以下のように出力されます。 ``` Linking: .build/planck_rev6_xyverz.elf [OK] Creating binary load file for flashing: .build/planck_rev6_xyverz.bin [OK] Creating load file for flashing: .build/planck_rev6_xyverz.hex [OK] Size after: text data bss dec hex filename 0 41820 0 41820 a35c .build/planck_rev6_xyverz.hex Copying planck_rev6_xyverz.bin to qmk_firmware folder [OK] dfu-util 0.9 Copyright 2005-2009 Weston Schmidt, Harald Welte and OpenMoko Inc. Copyright 2010-2016 Tormod Volden and Stefan Schmidt This program is Free Software and has ABSOLUTELY NO WARRANTY Please report bugs to http://sourceforge.net/p/dfu-util/tickets/ Invalid DFU suffix signature A valid DFU suffix will be required in a future dfu-util release!!! Opening DFU capable USB device... ID 0483:df11 Run-time device DFU version 011a Claiming USB DFU Interface... Setting Alternate Setting #0 ... Determining device status: state = dfuERROR, status = 10 dfuERROR, clearing status Determining device status: state = dfuIDLE, status = 0 dfuIDLE, continuing DFU mode device DFU version 011a Device returned transfer size 2048 DfuSe interface name: "Internal Flash " Downloading to address = 0x08000000, size = 41824 Download [=========================] 100% 41824 bytes Download done. File downloaded successfully Transitioning to dfuMANIFEST state ``` #### STM32 コマンド ファームウェアを STM32 デバイスに書き込むために使用できる DFU コマンドがいくつかあります。 * `:dfu-util` - STM32 デバイスに書き込むためのデフォルトコマンドで、STM32 ブートローダが見つかるまで待機します。 * `:dfu-util-split-left` - デフォルトのオプション (`:dfu-util`) と同様に、通常のファームウェアが書き込まれます。 ただし、分割キーボードの「左側の」EEPROM の設定も行われます。 * `:dfu-util-split-right` - デフォルトのオプション (`:dfu-util`) と同様に、通常のファームウェアが書き込まれます。 ただし、分割キーボードの「右側の」EEPROM の設定も行われます。 * `:st-link-cli` - dfu-util ではなく、ST-LINK の CLI ユーティリティを介してファームウェアを書き込めます。 ### BootloadHID Bootmapper Client(BMC)/bootloadHID/ATmega32A ベースのキーボードの場合、ファームウェアをコンパイルして書き込む準備ができたら、ターミナルウィンドウを開いてビルドコマンドを実行します。 make ::bootloaderHID たとえば、キーマップの名前が xyverz で、jj40 のキーマップを作成している場合、次のコマンドを使用します。 make jj40:xyverz:bootloaderHID ファームウェアのコンパイルが完了すると、以下のように出力されます。 ``` Linking: .build/jj40_default.elf [OK] Creating load file for flashing: .build/jj40_default.hex [OK] Copying jj40_default.hex to qmk_firmware folder [OK] Checking file size of jj40_default.hex [OK] * The firmware size is fine - 21920/28672 (6752 bytes free) ``` ここまでくると、ビルドスクリプトは5秒ごとに DFU ブートローダを探します。 デバイスが見つかるか、あなたがキャンセルするまで、以下を繰り返します。 ``` Error opening HIDBoot device: The specified device was not found Trying again in 5s. ``` これを実行したら、コントローラーをリセットする必要があります。 そして下のような出力が表示されます。 ``` Page size = 128 (0x80) Device size = 32768 (0x8000); 30720 bytes remaining Uploading 22016 (0x5600) bytes starting at 0 (0x0) 0x05580 ... 0x05600 ``` ## テストしましょう! おめでとうございます! カスタムファームウェアがキーボードにプログラムされました! 使ってみて、すべてがあなたの望むように動作するかどうか確認してください。 この初心者ガイドを完全なものにするために [テストとデバッグ](newbs_testing_debugging.md) を書いたので、カスタム機能のトラブルシューティング方法については、こちらをご覧ください。